2014年7月9日水曜日

ムラおこし発祥の地

この会社にも課題がある。Uターンさせるためには社員を増やさなければならない。しかし多すぎると経営を悪化させる。そこで生産とは別に、流通対策に取り組んだ。作れば売れるがそれも今だからこそだ。すでに、東南アジアから安価なエビが入るようになり、これは将来増え続ける。品質的には競合しないが、いずれ姫島の市場を脅かしていくに違いない。そこで販売部門だけを別会社にした。

六三年六月に設立した姫島商事株式会社は従業員五人で、車エビの販売と広告企画を一手に引き受け、とくに贈答用商品のPRに力を入れている。さらに、近い将来、東京営業所の設立も検討されている。

「田舎であればあるほど、地元の産業は雇用を重視しなければならない。従業員が少なくて済むハイテク産業よりは水産業の方が雇用促進の効果がある。だけど、田舎だけにいては刺激も少ないし、知識も身につかない。学校を出たら都会で働く、人に使われる経験をしてUターンしてほしい。営業マソの採用も計画してトるので、大都市相手に営業できる度胸のいい人、そして標準語のできる人を募集しています」藤本昭夫、四七歳。姫島村村長、兼姫島車えび養殖株式会社常務取締役の挑戦が続く。

農業と温泉の町、湯布院町は大分県の中央部にあり、人口一万二〇〇〇人。どこにでもありそうな、ごく普通のこの町に年間三〇〇万人もの観光客が訪れている。とりわけ、週末には肩からポシエットを下げたギャルやOLがかっ歩する。にぎわいは西の軽井沢だ。
 
ここも大山町と並んでムラおこし発祥の地。外に向かって明快なイメージを訴え、内に向かっては外のイメージに近づけようと意欲を燃やしつづけてきた。何もない町でどう生きるか。いや、何もないことはない。血気盛んな経営者たちを中心にした「人」がいた。したたかな湯布院のムラおこしは、「人」から始まった。