2014年6月10日火曜日

痛風とはどのような病気か

かつては、痛風は非常に稀な病気であり、明治初期には「日本に痛風なし」といわれたほどでした。しかし一九六〇年代から痛風患者数は激増しています。一九八〇年以降もなお痛風患者数は増加しており、一九七九年の厚生省患者調査で六八〇〇名、一九八四年には一万六〇〇名、一九九〇年には一万二七〇〇名でした。また、痛風予備群である高尿酸血症患者は現在少なく見積もっても一五〇万人といわれ、人間ドックでは男性の約二〇%に高尿酸血症が認められます。さらに、単に患者数が増えているだけでなく、発症年齢の低年齢化も指摘されています。

痛風患者の増加、若年化の背景には環境因子が密接に関与しており、痛風も生活習慣病の一つということになります。痛風の基盤となる高尿酸血症には有効な薬物療法がありますが、患者数の増加を考えると、痛風の予防を真剣に考える必要があります。

痛風は、血液中の尿酸濃度が高くなる「高尿酸血症」という状態が長く続いた後に、結晶化した尿酸が原因で関節炎が起こったり、腎臓が障害されたりする病気です。尿酸が関節内で結晶化し、これを白血球が異物と認識して貧食することにより急性関節炎が起こります。これを痛風発作といい、母趾の付け根の関節に最も頻繁に起こります。たいていの場合非常に激しい痛みを伴うためほとんど歩けず、靴も履けないくらいです。しかし七~一〇日で自然によくなり、次の発作までは全く無症状ですが、かならず再発します。

治療せずに放置しておくと、関節炎が重症になるばかりでなく、内臓、特に腎臓の機能が次第に障害されることがあります。高尿酸血症に対する有効な薬物がなかった時代には痛風患者の死因の大半を尿毒症が占めていました。高尿酸血症に対してきちんと治療が行われるようになった現在では、高尿酸血症が原因となった尿毒症はほとんどなくなりました。しかし、痛風患者には肥満や高脂血症の合併が多く、高血圧症、虚血性心臓病、脳卒中なども合併しています。