2015年7月15日水曜日

二一世紀の日本の社会保障の再構築

どれぐらいの医師数が妥当なのかというのは実はよくわからない。あまり医師数がふえると、いろいろ弊害も出てくるが、そうかといって、医師不足といわれるのも困る。医師数の将来予測というのは、前提の置き方によってどうにでも数字の動くものである。現在の医師の需給状況をみても、「医師は余りはじめた」とも「医師はいぜん不足気味である」ともいえるし、どちらの数字を出すこともできる。

しかし、いくつかの予測数値を見てみると、だいたい二〇〇〇年ごろにはいちおう充足し、二〇一〇年ごろにはかなり余るとみられる(歯科医は現在すでに余りはじめている)。このようにみると国民医療総合政策会議(浅田敏雄座長)が一九九六年一一月中旬に出した中間報告にもある「医学部入学定員の削減強化と保険医への定年制の導入」などの施策はこのさい行なうべきであろう。

また同報告書では、現在の病床数は医療法に基づくニ○万床より五万床多いと指摘、介護保険制度の導入で社会的入院が減るとみられるので病床削減の具体策を検討するよう主張している。この中間報告の建議は、これまでの審議会のペーパーにくらべて前向きではあるが、もうひとつの側面である入院患者の平均在院日数を短縮すれば、当然病床数も減るし、そうなれば医師も大幅に余るということにもなりかねない。

現在、社会的に問題になっている二一世紀の日本の社会保障の再構築は、これまでのところ、国民の自己負担がふえる話ばかりで、いわゆる″いい話”がない。 医師の削減といっても、すぐには効果の上がる方法はない。いまから少しずつ(一〇パーセントぐらい)医学部定員を削減していく以外にはいい方法は考えつかない。そうすると、どうしてもタイムラグのようなものが出る。それなら、いっそのこと、すこし余った医師を大病院の外来に配置して「三時間・三分」(三時間待って診療時間は三分といわれる)を少し解消するようなことを考えてみてはどうだろうか。