2012年9月6日木曜日

百科事典の使い方

百科事典には、大・中・小、さまざまな種類がある。辞書に関しては、小型版のほうが便利だ、とわたしは書いたが、百科事典は原則的に大きいほうがよい。大きい事典を徹底的に読むことで、ことばのたんなる意味だけではなく、ことばによってあらわされることがらそのものを教えてくれるのが「事典」なのだから、こちらは、くわしいにこしたことはないのである。

百科事典の使い方について、ひとつだけ留意しておくべきことがある。それは、百科事典を使うときに、まず「索引」をひく、ということだ。なるほど、何冊にもわかれた百科事典は、五十音順に項目を収録しており、したがって、いちおう五十音でひいてゆけば、じぶんの目的とする項目か、そのものズバリ、見つかることもある。しかし、百科事典の項目は、意外にすくないのである。

こころみに、いま、手もとにある大百科事典の「あ」の部のいちばんはじめから「あいしょう」(相性)までにどれだけ項目があるか、をしらべてみると、項目数は五十九である。そしてこんどは、小型の国語辞典で、おなじく「あ」の部のはじめから「あいしょう」までにふくまれているボキャブラリーをかぞえると、なんと七十語である。つまり、見出し語の数に関していえば、大型百科事典のほうが、かえって小型国語辞典より少ないのだ。

だから、たとえば「愛玩犬」のことをしらべようと思って国語辞典をひくと、ちゃんと「愛玩犬」かのっているのに、百科事典には、その項目がない、というようなことがしばしばだ。こんなに大きな図体をした事典なのに、国語辞典にのっていることばが0つていない!百科事典なんか役に立たないじゃないか!!気の短い人は、そんなふうに考えて、百科事典をほうり出してしまったりもする。

しかし、これはまちがいなのである。百科事典は、「ことがら」をひくものであって「ことば」をひくのではない。そして、「ことば」から「ことがら」にいたるためには、索引をひかなければならぬ。「事典」は「辞典」ではないのだから、いきなり五十音順でひくのは、むちゃなのである。